一般企業と薬局では業務内容が全く違うため、BCPの内容も異なって当然と言えます。さらに、実際に大地震等の災害が発生した際、一般企業の多くは業務量が減少する一方で、薬局は逆に業務量が増加する点に留意しなければなりません。業務量が増加する理由は、災害による負傷者が多数発生し、その対応で平時の業務量が数倍に増えるためです。

下図は、災害発生時の医療機関と一般企業のサービスレベルの違いを示した曲線になります。一般企業はサービスレベル(業務量)が下がりますが、医療機関はサービスレベル(業務量)が上がることを示しています。

clinick_img1

参照元:高知県医療機関災害対策指針【事業継続編】第5章

災害時、薬局が直接負傷者の処置をすることはありませんが、近隣医療機関と事前に協議をしていれば、調剤対応する可能性もあります。その後、数時間~数日後には慢性疾患の患者さんが自宅倒壊等により薬を紛失した理由で来局することも想定されます。その際、かかりつけの患者さんだけでなく、これまで通っていなかった近隣住民が駆けつける場合もあるでしょう。
また、薬剤師会では地域防災計画の基、救護所へ薬剤師を派遣することになっています。薬局から誰かを派遣すれば、救護所での活動も別に増える事になります。

以上、薬局のBCP策定においては平常時の業務内容をベースに、災害時に対応できるような専門的機能、さらに地域性や対象者を考慮した具体的な取り組みを盛り込むことが重要だと言えるでしょう。

BCPの現状について理解できましたでしょうか。今回は「なんとなく理解できた」程度で結構です。
重ねてお伝えしますが、経営者の考え方や薬局の立地、近隣医療機関の診療科等でBCPの内容は変わってきます。一般企業BCPとの違いも明らかです。

また、前述した3つの質問のような「平日日中、患者さんが数人待合室に居て、皆さんは普段通りに調剤をしている」といったリアルな設定から災害時の対応を考えていかないと、BCP策定の必要性が感じられない場合もあります。私がBCP策定のお手伝いをした薬局でも、最初の段階では「BCPについてなんとなく理解できた」程度でしたが、実際にBCPを策定していく中、最終段階になって「BCPの重要性について理解できた」という感想を経営者、スタッフから多々いただきます。