実は、BCPは一般企業でさえまだまだ浸透していないのが現状です。大企業は約7~8割がBCPを策定済ですが、全社員まで浸透していない企業も多く、中小企業においては、ある県の調査で約6割がBCP未策定との結果もあるほどです。
では、医療業界ではどうでしょうか。
内閣府が平成25年に医療施設、福祉施設を対象に事業継続計画(BCP)の策定状況を事業規模別で調査した「特定分野における事業継続に関する実態調査」によると、医療施設では全体で「策定済みである(7.1%)」、「策定中である(10.3%)」をあわせて17.4%で、82.6%の医療施設が未策定という状況です。
「策定済みである」の回答では、大施設で13.0%、中施設で7.5%、その他施設で5.5%となり、施設規模が小規模なほど策定状況は低くなっているという結果です。薬局はその他施設に入りますので、いかに浸透していないかがわかると思います。
さて、BCPが浸透しない理由はいくつかあり、主に「BCPの重要性・必要性を感じない」「法律・規則等の要請がない」「BCPを策定したくてもノウハウ・スキルがない」「策定に人手が足りない」等が挙げられます。みなさんの薬局で該当する理由はなんでしょうか?
まず、「BCPの重要性・必要性を感じない」理由としては、薬局BCPについて自治体や諸団体より、きちんとした説明が周知されていないことが原因だと考えられます。これまで直面したことのない災害を想定するのは非常に困難なことかもしれません。ただし、様々な災害対応のノウハウ、体験談等があれば、それをもとに自分の薬局に適したより現実的なBCPが策定していけるはずです。
次の「法律・規則等の要請がない」こともBCPを策定しない理由によく挙げられる1つです。医薬品の安全管理マニュアルのように、義務付けられればもちろん策定しなければなりませんが、法律・規則化されていなくても、今災害が発生したら薬局はどんな役割を果たせるかを改めて考えてみることが大切です。法律・規則化の有無に関係なくBCPは必要ではありませんか。
なお、「BCPを策定したくてもノウハウ・スキルがない」「策定する人手が足りない」という理由であれば、BCPの重要性は十分に理解していると思われますので、このブログを策定の動機付けとしてご活用いただければと思います。
上記以外の理由の他にBCPが浸透しない理由があります。それは与えられた定型フォーマットのままではBCPとして機能しないという事実があるからです。先ほどの3つの質問だけでも、薬局スタッフの地震への考え方、薬局の立地、近隣医療機関の診療科等で回答に違いが出てきました。加えて、事業内容や経営者の考え方などの違いがあるため、定型フォーマットにオリジナル情報を踏まえた対応を盛り込まなければ、いざという時に活用できるBCPにならないでしょう。