BCPとは、Business Continuity Planの略になり、日本語では事業継続計画と訳されています。地震、水害、パンデミック等の自然災害が発生した際、如何に資産を守りながら優先する事業を継続・再開させるかの行動計画と考えてください。
医療業界では、診療継続計画や業務継続計画とも表現されています。業務継続計画でピンときた方もいると思いますが、平成24年に施行された新型インフルエンザ特措法の特定接種申請書に「業務継続計画の有無」欄があり、その業務継続計画がBCPにあたります。実際に業務継続計画が無いために特定接種の申請を諦めた薬局も多いのではないでしょうか。
それでは、地震を想定したBCPにおいて、薬局の守るべき資産とはなんでしょうか?
それは、店舗、薬局スタッフ(薬剤師、事務員等)、医薬品、レセコン、自動分包機等です。その中でも特に守らなければいけないのが薬局スタッフの人命であり、もちろん来局している患者さんも守るべき人命になります。
次に、薬局の事業とはなんでしょうか?
BCPでは、地震発生後、優先して継続・再開する事業を選択し、その対策を検討しますが、薬局の事業として保険調剤、OTC医薬品販売、在宅訪問服薬指導等が挙げられます。
ここでは仮に保険調剤としておきます。そうしますと、薬局BCPとは「地震発生後、薬局スタッフ・患者を守りながら、如何に早く保険調剤を継続・再開するかの行動計画」と定義することが出来ます。
さて、ここで簡易的な質問を3つしますので、少しだけ具体的なBCPを考えてみましょう。
「平日の日中、患者さんが数人待合室に居て、皆さんは普段通りに調剤をしている」前提とします。
- (質問1)
- 大きな揺れを感じました。大地震の発生です。まず、何をしますか?
- (質問2)
- 余震の発生が心配ですが先程の大きな揺れは収まりました。何をしますか?
- (質問3)
- 大地震発生から数時間経ちました。何をしますか?
抽象的な質問ですが、すべて答えることができましたか?
それぞれの質問で出てきてほしい主な回答ですが、まず質問1は大地震発生直後に取るべき行動についての確認です。ご自身の身の安全確保、待合室にいる患者さんの安全確保、負傷者が発生したときの応急処置と病院搬送等が回答例になります。
質問2では、揺れが収まりましたので、薬剤師や事務スタッフとその家族の安否確認、店舗とその周辺の被害状況確認、災害対策本部の設置(複数店舗経営している場合)、近隣医療機関の被災状況確認と薬局の被災状況報告、地域薬剤師会へ連絡等が回答例になります。
質問3は、地震発生から数時間経過して落ち着きを取り戻してきた状況で取るべき行動の確認です。室内の片づけ、調剤の継続・再開または中止の判断、継続・再開する場合、その準備と事業の再開が回答例になります。
このように、すべての項目で事前にできる対策(事前対策)、発生したときに取るべき行動(行動計画)を策定し、薬局で勤務する全社員に周知・訓練することが薬局BCPの内容になります。